● 糖尿病網膜症とはどのような病気ですか?


糖尿病によって起きる網膜の病気です。通常、両眼に生じます。

1)単純網膜症
高血糖が続くと網膜の毛細血管に小さな瘤が生じ(初期)、徐々に網膜血管が詰まってきます(中期)。詰まった血管が増えるにしたがって網膜の血液供給が不足し、血管新生因子(VEGF)が作られます(進行期)。

2)黄斑症
血管新生因子やその他の炎症性物質が性網膜血管を漏れやすくするので、網膜(特に黄斑部)に浮腫を生じます。そのために視力が障害された状態を黄斑症と呼びます。

3)増殖網膜症
血管新生因子が新しい血管を作り、網膜と硝子体の境目に沿って広がって増殖膜を作ります。この血管は漏れやすく破れやすい性質があるので、網膜浮腫と硝子体出血の原因になります。さらに進行すると増殖膜が網膜を引き剥がして網膜剥離を起こします。

● どういう人が網膜症になりやすいのですか?


糖尿病を持つ人すべてが網膜症になりえます。糖尿病になってからの期間の長い人、血糖コントロールの悪い人(ヘモグロビンA1Cが8%以上)は網膜症になりやすいという報告があります。罹病期間については、いつから糖尿病があったかはっきりしないことが多いので、「糖尿病が発見されてからの期間」では判断できません。

● どのような症状が出るのでしょうか?

初期には全く自覚症状がありません。症状が出てから治療を行うのでは手遅れです。最初の症状として多いのは、シミのような斑点が漂って見える現象で、硝子体出血が原因です。さらに進行すると視力が低下します。その原因としては次のものがあります。

1)網膜浮腫:カメラで言えばフィルムがふやけた状態です。
2)硝子体出血:出血がカーテンのように光を遮ります。
3)網膜剥離:剥がすれた網膜は光を感じません。

● 診断はどのようにするのですか?

視力、眼圧測定をしてから散瞳検査を行います。網膜に浮腫、白斑(沈着物)、血管異常、出血斑を認めた場合には、造影剤を腕から注射して眼底写真を撮る検査(蛍光眼底造影)でその程度を評価します。

● 治療はどのようにするのですか?

まず、内科で糖尿病のコントロールをしっかり行います。網膜症だけを治療しても効果はあがりません。

1)単純網膜症
内科で血糖コントロールを行い、眼科は定期的な診察を行います。

2)黄斑症
局所レーザー凝固を行います。網膜血管がもれやすくなっている場所に数百発のレーザーを当てて網膜の浮腫を減らします。また、ステロイド注入や抗VEGF療法も有効な治療法です。

3)増殖網膜症
レーザー治療(汎網膜光凝固)を行います。網膜血管が詰まって血流が悪くなった部分に1000発から2000発のレーザーを当てます。通常は数回に分けて行います。この治療はいわば網膜の「間引き」なので、治療後に視力の低下、色覚の変化、暗い所での見づらさを引き起こすことがあります。視力が落ちる可能性があっても、失明を避けるためにレーザー治療を行う場合が多くあります。この点は担当医から十分に説明を受けてください。

● 硝子体手術はどのような場合に行うのですか?

1)硝子体出血で視力が低下している場合
出血を取り除きます。必要に応じてレーザー治療を追加します。

2)増殖変化による網膜剥離の可能性が高い場合
増殖膜を取り除きます。

3)黄斑症が他の治療で改善しない場合
硝子体を取り除きます。

● 増殖網膜症になると失明するのですか?

増殖網膜症であっても、適切なレーザー治療と硝子体手術を受ければ5年以内に失明する危険は5%以下と言われています。黄斑症による重い視力障害(矯正視力0.1以下)もステロイド注入や抗VEGF療法によって減らすことができます。